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『世界知識行 黄金の平原』第八章 12  

  • pp.269-271
  • 担当:浅井

しかし[アムド・チベット語にある]wa字[の音]*1もインドの言語にないということには同意できないと思うかもしれないが,非常に理にかなっているのであって,インドの言語ではwa字を我々*2のようには決して読まない,ということである。warahi*3等と書いたものについても,黄河の南の地域のアムドの人々が[雄牛と牝牛の総称である]ba glang*4,[牝牛を表す]ba mo,[大きな建物意味する]ba gamなどのbaの字を読む読み方とbarahiという時のbaの読み方はほとんど違わないのであって,それも上下の唇を合わせずにワと言うくらいである。よってwa*5という,口蓋の表面で摩擦させるその音はインドの言語にはまったくないのである。

さらに,このwaの字はトゥミが2つの文字を混ぜて新たに作ったと,私は考える。それはlaとbaではなく'aとbaを混ぜたのだと思う。多くの古文書にはwaの字形が【illust.】このように見られ,そこからウメーのwaの字形が生じたことも明らかであるためである。この[文字の]読み方も'aとbaを混ぜたものそのものであり,カム地方の人々の言葉では'aとbaの読みを混同しがちであり,'aとbaの音を区別しないので,生徒たちもたくさんビンタをもらうことになる。中央チベットの言葉でも[狐を表す]wa moを'a moと言い,[狐皮の帽子を意味する]wa zhwaを'a zhaと言う[など,]'aをややはっきり発音する[。その]理由は,我々がbaが付いた[元の]文字をそのように読んでいるからである。

一般にba,'a,haの3つはチベットの多くの地域で読み方が異なるので,詳細に調べることにしよう。

もし'aとbaが合わされてwaの字が生まれたのならば,wa字の上の部分がlaと似ているのはどうしてかというと,そこにツァター*6が付けられたのである。トゥミが作り出した7つの文字に記号を付けたということは,すでに述べた。さらに伝統的な書き方の多くにおいてwa字がこの【illust.】ように書かれるのは,ツァターそのものであることが明らかである。一部の古文書では【illust.】や【illust.】なども見られる。

これで見るべき理由を示し終えたが,私のこの話はあなた方が好むどころか[あなた方にとって]おもしろくもないだろうけれど,私としては学識ある人でも理解できるだろうかと思うだけであって,けんか腰に強要して[相手の意見を]はねつけようと望むものでは決してない。強要というのは自分がいやにならなければ,やりたいだけできるからである。

愛憎と嫉妬に酔った強要[という名]の虎が
恐ろしい咆哮をあげる深い森に
一人とり残された真実[という名]のこの若者を
学識ある人が哀れんでおくれ

古いチベット語経典では大部分でこのような【illust.】文頭記号*7と,すべてのシェーの前にnga字のようなツェクがある*8。たとえば【illust.】や【illust.】のようなものである。母音がiである2つの文字が近くにある場合,一方[の母音記号i]をひっくりかえして【illust.】のように[表記されたもの],また再後置字のdaを省かないもの,前置字saとraを上下に重ねず前後に少しずらしてこの【illust.】ように[書かれたもの],la sogsが【illust.】,rdzogs soが【illust.】[と書かれたもの],ca,cha,ja,tsa,tsha,dzaがこのように[書かれたもの]などは,例をご覧あれ。こういう書き方がどういう種類のものであるかについては,サキャ派のコンマたち*9とナルタンのケンポ*10たちのご著書にも[説明が]ある。

コメント  

  • p.269 l.13からのwaとbaの読み方について述べているところは、つづりと読みの関係がわかるように、読みの方を[]に入れて、
    「ba glang[walang](雄牛と牝牛の総称),ba mo[wamo](牝牛),ba gam[wagam](大きな建物)などのba[wa]の字を読む読み方とbarahi[warahi]という時のba[wa]の読み方はほとんど違わないのであって,それも上下の唇を合わせずにba[wa]と言うくらいである。よってwa[Ra]という,口蓋の表面で摩擦させるその音はインドの言葉にはまったくないのである。」
    「口蓋の表面で摩擦させるその音」とは、漢語版の注⑤にもあるように、アムド方言のwaの発音のことを言っているものと思います。これはうがいをする時のような「グワ」という有声口蓋垂摩擦音です。
    • yumtso
  • yumtsoさん、ご指摘ありがとうございます。確かに発音を示さないと、わからないですよね。
    []は訳者により意味の補足をするときに使っているので、何かほかの記号を使うのがいいだろうと思います。<>はどうだろう?
    • dekipema 2007-02-14 (水) 11:04:57

*1 以下はチベット語の音についての話であり,ここで著者は「waの音」というべきところを「waの字」といっている。音と文字とを混同しているようである。
*2 ここではチベット人全般ではなくアムド人を指すと考えられる。
*3 varahi(ヴィシュヌ神の化身の一つであるヴァラーハの妃)のこと?
*4 発音はwalang。以下の2語wamo,wagam。
*5 アムド語では,うがいをする時のような「グワ」という有声口蓋垂摩擦音。
*6 tsa字などの右肩につけられた旗のような記号。
*7 各章の冒頭,および葉の裏面末尾の文章が次葉に連続している場合,次葉表面の最初に書かれる雲形の記号。初頭符号。
*8 シェーの前にツェクを記すのは,現在nga字の場合のみ。
*9 パクパおよびそれ以降のサキャ派の長。sa skya gong ma lngaという場合は,サチェン・クンガニンポ,ソナムツェモ,タクパギェンツェン,サパン,パクパを指す。
*10 「僧院長」「座主」等とすべきか? TBRCではsnar thang mkhan chenというワードで10人の名前が現れるが,ここで著者がそのうちの誰について述べているのかは不明。

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