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〜 ROA_01 〜

チベット文学茶房 >> ro sgrung

第1章 乞食の息子・ダワ・タクパに王子・デチョー・サンポと名付ける (試訳) 

 ここに、忍耐と勇気のない人のために、王・デチョー・サンボの伝記を説きますから、皆さんお聞きください。さて、物語を聞く時、3つの誓いを守らねばなりません。第1に、分かったことは必ず話すこと。第2に、集中して聞くこと。第3に内容を歪めてとらえないことです。それらを守るべきことを、心に留めておいてください。

 昔、南インドに、何度もパンディッタ(5つの学問‐仏教学、論理学、医学、工芸学、声明学‐に通じた学者)として生まれた教師・ルドゥプ・ニンボという人がいて、聖なる山で、仏教や道徳の論書などを執筆していました。ある日のこと彼は「ふさわしい弟子が必要だ」と考え、瞑想に入りました。寺の南側の岩山の崖にはカラスの巣がありました。

 さて、谷の下流には王様がいました。彼には息子がいました。王様の息子の家来には金持ちの息子とともに、利発で賢い乞食の息子がいました。王様の息子は金持ちの息子と乞食の息子を連れて、谷の奥に気晴らしに行きました。聖なる山の頂上に行くと、崖にカラスの巣があるのを見つけました。そこで石を一抱え集め、崖の下に行き、

「我々3人は、『このカラスの巣が出てくるまで帰らない』と約束を交わそう」

と言い、互いに約束を交わしました。

 彼らは3人でカラスの巣を叩きはじめました。陽が暖かくなってくると(昼になると)王様の息子は言いました。

「今生に必要な家来や財産が私にはある。来世に必要な仏教に対する布施も以前からしている。これからもし続けよう。約束などは口先だけのことで、鹿が持ち去るほど軽い。私は帰る」

そう言って王様の息子が去って行くと、乞食の息子が言いました。

「私はこれまで約束を破ったことがない。今も約束を破ってはいけないぞ」

そう言って、石を一抱え集めて、また巣を叩きました。

金持ちの息子が言いました。

「力が強いのに王様の息子は、身勝手に約束を破った。身勝手に先に帰ってしまった。私たち2人は、この巣が取り出されるまでここにいよう」

そう言って、巣を叩きました。

 太陽が峠の向こうに沈もうとしていましたが、巣はまだ取り出されていませんでした。

「約束などは口先だけのことで、鹿が持ち去るほど軽い。今生に必要な宝が私にはある。宝があれば名声は自然に高まる。帰ろう」

金持ちの息子はそう言って、帰ってしまいました。

 乞食の息子は思いました。

「彼は金持ちの息子なので、辛抱ができない。乞食の息子である私・ダワ・タクパは、このカラスの巣を取り出すまでは、死んでもここを去らないぞ」

そう思って、また石を一抱え集めて、巣を叩き続けました。

 陽が沈むとカラスの巣から、二の腕を覆うまで髪の毛が伸びている行者が出てきて、乞食の息子の身体を、まるで陽が昇るように仰向けに放り投げ、陽が沈むようにうつ伏せに地面に叩き付け、こう言いました。

「乞食の息子よ、川に金の色が現われた。岩からフクロウの声がした。巣のある鳥たちは巣に帰る。巣のない鳥たちは巣を探す。家のある人たちは家に帰る。家のない人たちは宿を探しに行け。この谷には、王より力の強い者はいないのに、その息子は先に帰った。誰よりも多くの財産を持っているのに、金持ちの息子も先に帰った。瞑想のため籠っている者の部屋の門を石で叩いて、捧げものでもくれるか?」

乞食の息子は次のように申し上げました。

「修行なさっている方が、住んでらっしるとは思いませんでした。王様の息子と金持ちの息子、そして私・乞食の息子の3人は、このカラスの巣を取り出すまでは帰らないという約束を交わしました。王様の息子は、家来もいれば財産も豊富、勇気ある兵士も配下にたくさんいるので、約束を重く考えずお帰りになりました。金持ちの息子も、宝と財産をたくさん持っているので、約束を重く考えず帰りました。私は貧乏人の息子ですから、財産はありません。捧げものなど持ってくるはずありません。ただ約束を破ってはいけないと考えて、このカラスの巣を叩いていたのです」

 この言葉を聞いて教師は「こいつは、領主や金持ちの生まれではないけれど、智慧がある。だから、難行・苦行をすることができるだろう」と思い、

「お前には、父母がいるか?」

とお尋ねになりました。

「父母がいるのは、福徳を積んだ人たちです。財産を持っている者を『貧乏人』と呼びません。自分の福徳について考えれば、先程申しましたとおり、ため息がでるばかりです」

と答えたので、ラマは自分の召し使いとして彼を連れて、南インドの聖なる山に向かいました。

 その時、南インドの聖なる山に広大な墓場が1つありました。その周りをたくさんの死体が囲んでいました。その中心には、ゴードゥプ・ギャツォという、口の達者な老屍鬼がいます。もし一言も漏らさず彼を捕え連れ帰って来れれば、南方の聖なる山に金の大鉱脈が現れ、人々の利益となるのです。そこで彼を捕えるために乞食・ダワタクパに王子・デチョー・サンボと名付け、網と剣、斧、索を準備し、王子のために教師は祈りをささげました。吉日に善住の供養を行って、ラマは次のように言いました。

「王子・デチョー・サンボよ、汝は苦行と努力を起こし、あの屍鬼が何を言おうとも、返事をせずに帰って来い。この邸宅の四方にそれぞれ結界の標がある。すぐに屍鬼を捕らえれれば、結界の標を越えて来い。だが、屍鬼に返事をしてしまったら、ここにツァンパ団子がある。7日間はこれで耐え凌げよう。それでもだめなら、東の標のもとに来い。7日分のツァンパ団子がそこにあるだろう。だがそうした場合、屍鬼の膝下までしか金に変わらぬだろう。努力を起こさなければ、金の鉱脈は現れぬのだ。私も観想と瞑想を順に行おう。汝も努力を順に起こせ。間違い無く人々の利益となる金の鉱脈を必ず生み出さねばならぬ」

さらに考えを巡らされ、「さらに7日の間に屍鬼を捕らえられなければ、結界の標を越えて帰って来るかも知れない」とお考えになり、

「さらに7日、合わせて14日、その間に屍鬼を捕らえられねば、南の結界の標のもとに来い。標に次のような文字が記されているだろう。『背中に屍鬼を背負わずに、この結界を決して越えてはならない』と。努力を起こせ」

そう言って、教師は奥に消えました。それから王子・デチョー・サンボは1つの網と、1つの斧、1振りの剣、1本の索、ツァンパ団子、革袋を背負い、広い墓場に向かいました。

文責:yungdrung

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