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〜 ROA_13 〜

チベット文学茶房 >> ro sgrung

第13章 悪いル(ナーガ)の口から逃れ、王位を得る(試訳) 

再び大木のもとに行き、剣で斬り付けました。

 「ラマはルドゥプ・ニンボ  私は王子・デチョーサンボ  網は鉄九眼  索は幻のイヤリング  剣は鋭く岩を割る  ツァンパ団子はいくらたべても尽きないぞ  屍鬼よ、降りてこねば大木を切るぞ」

と言うと、屍鬼は降りて来ました。それを棒で叩き、網の中に入れ、索で縛り、背負いました。7歩ほど歩いたところで屍鬼が、「王子よ、道は遠い。何かお話でもしろよ、でなければ私が話をするぞ」と言いました。もう慣れているので何も喋らず歩いていると、「機嫌の悪い王子の口から、言葉は出ないようだ。私が話をするから聞きなさい」と言って、語りはじめました。

 ある大きな国に偉大な王様がいました。その国には、畑に水を供給するための大きな池があって、その水を2人の悪いル(ナーガ)が守っていました。池から水を流す者は悪いルに食われるので、水を流す必要が生じた時には、善良強弱の区別なく、サイコロを振って負けた者が行かなければなりませんでした。  ある日のこと、王子がサイコロに負けました。その国には、貧乏な老夫婦に1人の息子がいました。その息子は次のように考えました。「今回、私が王子の代りに行き、悪いルに食われない方法を講じれば、老いた父母は王から宝をもらって満足するだろうし、他の人たちにも利益となる」。そう考えて王子のもとに行き、王夫妻に次のように言いました。 「王夫妻よ、御心配召されるな。王子が行かれたら、王統が絶えるかもしれません。御夫妻も、心配しすぎてお亡くなりになるかもしれません。ですから、これから私の申し上げることに対して、国の他の人たちが嫉妬しないほどの褒美を下さいますようお願いします。私の父母に、生きている間は食事と飲み物を、死後は供養を十分に行ってくださいますようお願いいたします。私は死を恐れません。行きます」  そう申し上げると王夫妻は喜び、願いどおり、老夫婦2人ともよく保護することを約束しました。その息子は食料を背負い、1本の鍬を持って出かけました。  池の排水口の側に寝転っていると、その夜、自分を食べに来る者は誰も現れませんでした。翌日、夜が明けてから見た時、白ポプラの洞の中から黒い1匹の大蛇と1匹の大蛙が声をあげながら出て来ました。蛙が蛇に言いました。 「昨日、あいつが横になっていたのに食わなかったのは、お前の責任だ」 蛇は 「蛙よ、お前に責任がある。もしお前が少し早く来ていたら、あいつは今ここにいるだろうか。だからお前に責任がある」 蛙は言い返しました。 「愚かな蛇よ、お前を殺して洗い食べれば、痰が金となる」 「おまえを殺し屍を5色の絹で包み、王の蔵に置けば、宝となる」 2匹は「おまえが悪い」と互いに罵り合い、仲違いして争いました。陽が暮れるまで争い疲れ、半生半死の状態になりました。そこで彼は、蛇と蛙の頭に鍬を打下ろして殺しました。「蛇と蛙2匹の会話は本当かどうか」と考え、蛇を水で洗って飲み込み咳き込むと、金となった痰が出てきました。蛙の屍体を担ぎ、王の宮殿に向かいました。  国に帰着すると、国の人たちは彼を見るや「帰って来ることができたとは、何としたことだ? 今年ほどよい用水路の水が流れ出たことはない」と言い、たいへん喜びました。老夫婦は、自分の息子が死なず、生きて再会することができたので、この上なく喜びました。そして彼は王夫妻と王子のもとに行きました。王夫妻と王子は彼を抱き、「帰って来れたのはどうしてか? 今年ほど用水路の水が多く流れ出たことはない」と訊ねると、彼は、 「私に死ぬ運命にはなかったのです。畑に水を流している間、誰も食べにくる者は現れませんでした。その翌日、1匹の蛇と1匹の蛙が現れ、『昨日、奴を食べれなかった。おまえが悪い』と互いに罵り合い、争いました。蛇は蛙に『お前を殺し、屍体を5色の絹で包み、蔵に置けば宝と同じだ』と言い、蛙は蛇に『お前を殺し、水で洗い、飲み込み痰を吐くと、痰は金となる』と言いながら、陽が沈むまで互いに争いました。最後、2匹とも半生半死となった時、私は2匹の頭に鍬を降り下ろし、殺しました。これから畑の水を流しに行くのに、サイコロを振る必要はありません。この如意宝を王に捧げます」 と言って、金の蛙を献上しました。王は彼に対し、自分の兄弟のように振るまいました。ある日、王夫妻は亡くなりました。彼の老父母も亡くなりました。  それからある日のこと、王子が「2人で今日、気晴らしに行こう」と言い、小麦粉団子と弓矢を背負い、国の上流域に行きました。多くの峠と谷を越え、山の頂を過ぎ、行くと、大きな谷に人がひしめき合っているのが見え、そこに降りて行きました。そこには人が溢れていて、多くの大臣たちが着飾って、象の鼻に長寿瓶を掛け、市場としていましたが、象が鼻を振ると、大臣たちは倒れました。象が2人のもとにやって来て、長寿瓶を王子の頭上に置くと、大臣たちは楽器を鳴らしながら、彼を囲み、あっと言う間にどこかに連れて行き、消えました。  残された彼は、頭を抱えました。(夜になり)辺りが暗くなり、進むにも道を見つけられず、母子2人のいる家に宿を借りました。そこで彼は喉が乾いて母子2人に「チャンはあるか?」と訊ねると、「チャン代として何がある?」と逆に問われた。「金がある」と答えると、母子は彼にありったけのチャンを勧めました。半日ほど経って、チャンに酔って嘔吐しました。母がバター灯明を持って来て見ると、反吐がすべて金になっているのが見え、「さらに多くの金を吐くのでは」と思い、口からチャンを注ぎました。すると立続けに嘔吐し、ついに蛇が出て来ました。蛇が出てくると、嘔吐も止まりました。そこで、「金が出てくるのはこの蛇のせいだわ」と考えながら、洗い、娘に飲み込ませました。そこで娘が咳き込むと、金の痰が出て来ました。翌日、起きてチャン代を払おうと痰を吐きましたが何も出ないので、老母に言いました。「昨日の反吐として吐いた金はあなたのものにしていいが、私の蛇を渡してくれ」そう言うと「できるもんか。どこから来たのかも分からない流浪の乞食であるお前に、昨日は食事を与え、寝床をあてがった。『チャン代として金がある』というからチャンをやった。それがチャン代がないうえ、サギを働こうっていうのかい」。そう言って老母は彼の手を引っぱって、交差点まで追い出しました。  彼の思うに、「私は運(ルンタ)がいいから、悪いルに食われなかった。国王と同じ食事や財産を享受するほどになった。このような如意宝も得た。だが運が悪くなり、王もどこに行ったのか探しようがない。金を吐くあの蛇も失った。もう国に帰っても恥をかくだけだ。この谷の奥で自殺しよう」と考えて、行きました。  谷の奥に行くと、3人の男の子が品物を分配をめぐって仲違いし、喧嘩しているのが目にとまりました。そこで彼は子供達のそばに行き見ると、3人は背負い袋と靴、帽子をめぐって仲違いしていました。そこで「何を仲違いしているのだ?」と言うと、「僕たち3人は、これらをめぐって争っているのです」と答えました。「この3つが何のためになるのだ?」と訊ねると、 「この靴を履けば、自分の望むところはどこにでも行けますが、すこし小さい。この帽子を被れば、誰にも見られないのですが、もう少し小さければいいのに。この背負い袋は、『肉よ来い』と言えば肉がやって来て、『バターよ来い』と言えばバターがやって来る。欲しいものは『来い』と言えば何でもやって来るのです」 と答えました。そこで彼は、 「3人でかけっこし、1着の者がこの背負い袋を持って行く。2着の者がこの帽子を、最後の者がこの靴を持って行けばいい」 と言いました。すると3人は「あなたのように良い人は、探しても見つかりません」と言って向こうに走り出しました。そこで彼が、頭に帽子を被り、手に背負い袋を持って、一番にゴールした者に渡そうと思って、立っていると、かけっこを始めた3人は「あの人はどこに行った?」と言いながら、目をきょろきょろさせてていました。3人のまん中の弟が「僕がさっきから『2人とも何でも好きなものを持って行けば』と言ってたのに、無意味な争いをしてしまった。もう十分でしょう」と言って、子供達は帰って行きました。  3人の子供が帰った後で、岩をよじ登るとそこには、大木が生えていて、その根元のところに行くと、向こうから九頭の羅刹がやって来ました。帽子を被りそこにいると、羅刹は彼に気付くことなく、1本の青い花を摘み、顔の前でぐるぐる回しました。すると羅刹は大きな老猿に変化して、大木をよじ登って行きました。その翌日、陽が昇ると大木の頂から下りて来て、1本の黄色い花を摘み、顔の前でぐるぐる回すや、以前の羅刹に戻りました。  彼も黄色い花と青い花を摘み、あの靴を履き、「老母と娘の家の門近くに行ければ」と考えていると、老母と娘の家の門前に着きました。そこで老母と娘を呼ぶと、あの娘が窓から顔を出しました。そこで娘の鼻先で青い花をぐるぐる回すと、その娘は恐ろしい姿の老猿になりました。彼は帽子を被ったので、誰にも気付かれません。その娘が「誰もいないよ」と言って奥に戻って来た時、娘が猿になっているのを見て、母は驚き、「先日のあの人の幻術ではないか?」と考え、王の宮殿の門前を隅から隅まで探しましたが見つかりません。彼は、背負い袋の中に帽子を入れ、靴を左右の腰に差し、老母と娘の家の中に上がり込みました。老母が彼を見るや、「あなたの金と蛇を渡します」と言い、礼拝しました。そこで彼は老母に言いました。「よかった。『わざわざ訊ねる必要ない、相手が勝手に喋るから』というのは本当だ。私の蛇と金を持って来なさい」。そう言われると、身体は猿に変わっていた娘でありましたが、心は変わっていないので、母娘2人は礼拝しました。そして娘が吐くと、蛇が出て来ました。その蛇を水で洗い、彼は飲み込みました。その娘を小部屋に連れて行き、「娘よ、お前は可愛い」と言って、黄色い花を鼻先でぐるぐる回すと、娘はもとの姿に戻りました。母娘2人は、得た金をすべて彼の目の前に積み上げ、礼拝しました。心の清らかな彼は、金の中から母娘の生活に必要な分は与え、靴を履き、背負い袋の中に残りの金を入れ、帽子を被り、「王のもとに行ければ」と考えを巡らすや、王の前に着きました。  彼を見るや王は、立ち上がり、抱き合って、離れられなくなりました。この福徳あるものを以前の国の国王として即位させ、両国平等に政治を行いました。こちらには如意宝としての偉大なる金の蛙が、向こうには如意宝として何でも得られる背負い袋があります。その福徳ある者が王位に就いて、国は栄え、家臣人民たちは幸せになりました。

 そう屍鬼が話しをすると、王子の口から、「その人は何と福徳が大きいことか」という言葉が漏れました。「屍鬼に対して、鷹のようになんと素早い返事だ」と言って、その屍鬼は逃げて行きました。王子は、「べらべら喋る彼に対し、心が散漫な私は答えてしまった。屍鬼がなく帰れば、ラマの教えに違うことになる」。そう考え、また墓場に向かいました。

文責:yungdrung

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