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〜 ROB_05 〜

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第五話 金とトルコ石を吐く 

試し訳です。章立ては原文に従いました。分からないところは原文をWylie表記で示しました。chime

RO2_05_01 p.42 

デチューサンボはグートゥプなる屍鬼が金湖ちゃんと銀湖ちゃんの話をするのを聞いて,ルドゥプ先生の言いつけを忘れて口を滑らせてしまったので,屍鬼グートゥプは逃げて,墓場の清涼園にまた飛んでいってしまいました。彼は他にどうする手立てもないので,ふたたび前と同じように墓場に行って,屍鬼グートゥプを袋に詰め,縄でしばり,背中に負い,できるだけ急いで歩き,道に沿って進みました。数歩歩き出したところで,屍鬼グートゥプはまたしても物語を語りかけてきました。

RO2_05_02 pp.42-44 

むかしむかし,大きな村がありまして,その上手に大きな池がありました。その大きな池から水を引いてきて,村の畑に引き,また人間と家畜みんなで使っていました。むかしはその村は暮らしやすい楽しいところだったようですが,後になっていつのまにやら分からないうちに悪い龍の化け物が二匹,その池に住み着いてしまいました。一匹は亀のgshedで,一匹は蛙のgshedでした。その二匹が池に住み着いてからというもの,畑の水が止められ,毎年その二匹のために二人の若者を供物として捧げなければなりませんでした。そうしないと亀と蛙が池の水を止めるだけでなく,さらに村に霜と雹と干ばつという三害をもたらし,人々は病気になり,家畜は死に,村人たちは安心して暮らすことができなくなってしまいます。村のお百姓さんたちはどうしようもなくて,辛いのを我慢して,毎年二人の若者を亀と蛙の魔物に捧げるしかありませんでした。

さて,誰も自分の息子を亀や蛙の餌になどやりたくなかったので,さいころを振って(sho bsgyur),誰の息子が当たっても,当たった者が行くということに決めました。そうして数年が過ぎ,再びさいころを振ったところ,その土地の百姓の息子と猟師の息子に当たりました。その二人の若者も村の習わしに従って池のほとりに龍の化け物の亀と蛙への捧げものとして行きました。村人たちは悲しみにくれながら途中まで見送りをしました。二人の若者は賢くて勇気があったので,意味もなく自分たちが龍の化け物の餌食となるのでは役立たずだと思いました。池のほとりに着いたとき,まだ龍の化け物は二匹とも姿を現していなかったので,二人は木陰に隠れて何が起こるかじっと見ていました。

しばらくすると池の中から恐ろしげな二匹の生き物が現れました。一方は亀で,一方は蛙なのが一目で分かりました。亀は蛙に言いました。

「おい,兄さん,慌てることはないさ。人間どもはみんなあんたの命根を知らないから,あんたにおいしい食べ物を運んできてくれるというわけだ。あいつらはなんて阿呆なんだろう。もしあいつらに知られちまったら,池のほとりのネズの木の小枝を取ってきて,あんたの頭を叩いて殺し,その屍を呑み込めば,[口から]トルコ石を吐き出すんじゃないのかい」と言いました。

RO2_05_03 p.44 

蛙はぱっと立ち上がり,亀に言いました。

「ははは。お前さん,黒豚がカラスに向かってお前は黒いとののしるような真似はやめろよ。おれたちは似たもの同士じゃないか。みんなが知って,池のほとりの石を持ち上げてあんたの首に投げつけたら,あんたを殺せる。そしてその屍を呑み込んだら金を吐くんじゃないのかい」と言いました。

RO2_05_04 pp.44-46 

二匹の龍の化け物が話をしているのを木陰にいた二人の子供たちは耳にしました。二人は互いに目配せをして,百姓の息子はネズの木の小枝をつかみ,猟師の息子は池のほとりの平石をつかんで,ぱっと走り出して龍の化け物のいるところにやってきて,化け物の亀と蛙を殺しました。すると二匹のからだは縮んでどんどん小さくなりました。百姓の息子は蛙を呑み込み,猟師の息子は亀を呑み込み,試しに一吐きしてみたところ,本当に猟師の息子が口から金を吐き出し,百姓の息子は口から取り小石を吐き出すことができました。二人はたいそう嬉しくなって,たくさん語り合いました。百姓の息子の言うには,

「さてぼくら二人が龍の化け物の亀と蛙を殺したからには,水を止めるやつはもういない。家に帰れるね」と言いました。すると猟師の息子は,

「慌てて家に帰ったら,死体が起き上がってきたと言われるぞ。うちはこれまでとても貧しかったから,よその地方に行きたくても行けなかった。今回ぼくらは手にあまりある財産があるのだから,うちに慌てて帰らなくてもいいさ。あちこち旅をして回って物見遊山をして行ったほうがいい」と言うので,その通りに,ふるさとを離れて山や谷をいくつも越え,よその村にやってきました。

そこで居酒屋のおかみの家に行って酒を飲むと,二人は細長い金とトルコ石を吐きだして酒代を支払いました。居酒屋のおかみは驚いて,二人にいろいろと美辞麗句を述べ立てて酒を飲ませるので,[二人は]夜はそこに泊まることにしました。夜になって居酒屋のおかみは濃い酒を好き放題飲ませたので,二人も飲みたい放題飲んで,すっかり酒に酔って泥のごとくなってしまいました。二人が吐くと,はじめたくさんの金とトルコ石を吐きだしたので,それを居酒屋のおかみが取りました。二人は何度も何度も吐いたので,居酒屋のおかみは何度も金とトルコ石を手にしてたいへん喜びました。終いに二人は金の亀とトルコ石の蛙を吐きだして,その後は水ほどしか吐き出すこともできませんでした。居酒屋のおかみはすぐに金とトルコ石を吐き出す元は金の亀とトルコ石の蛙だと分かって,自分の娘を呼んで,娘はトルコ石の蛙を,自分は金の亀を呑み込みました。

二人の若者は翌朝早く起きて,酒の酔いが醒めて,記憶が戻り(dran pas zin),酒代と宿代を払おうと思って吐こうとしましたが,水ほどしか吐き出せませんでした。そこでようやく大変なことになったのを知って,居酒屋のおかみに宝物がなくなったいきさつを話したけれども,おかみはひどく怒ったようにして,

「人に恥がなければ犬,犬に尻尾がなければ鬼ということわざは本当だったようね。あんたがたはあたしに酒代も宿代も払わないうえ,よくも無実の者に黒い帽子をかぶせるわね!」と叱りつけるので,二人はどうしようもなくなって出て行きました。

ROB_02_05 pp.46-48 

二人は歩いて行くと,森の辺りに着きました。森に入るとある人が木の上に登って黄色い花を手折り,その花を自分のからだに触れたとたん,猿になりました。その猿はすばしっこく木に登り,木の実をおなか一杯食べました。こんどは赤い花を手折り,それをからだに触れるとたちまち元通りの人間に戻るのを見ました。二人は黄色い花と赤い花を手折って人間が猿になる術と猿が人間になる術を知りました。

国々を渡り歩いて,相当長い年月が過ぎました。世にも珍しいものをたくさん見て,秘法もたくさん覚えて,再びふるさとに帰ってきました。道中,むかしの居酒屋に立ち寄ると,おかみは娘を行かせて二人の接待をさせました。二人も以前,居酒屋の母娘によからぬことをされたのを思い出し,黄色い花を娘のからだに触れました。すると娘はたちまち猿になり,居酒屋の中を行ったり来たり動き回りました。居酒屋のおかみがやってきて目をやると,娘の姿はなく,猿が一匹いるのが見えました。二人が誰だか分かり,おかみはこの二人は驚くべき神通力の持ち主だと思って,二人に許しを請うと,二人はこう言いました。

「『馬の走りが過ぎれば終いにぬかるみに足を取られる。蟻の振る舞いが過ぎれば手足を松脂に取られる。上にはさらに上がいる。賢い者の上には賢い者がいる。馬は走るなら安全な平原を走れ。話をするなら世の中の道理を話せ』ということわざがある。居酒屋のおかみさんよ,言われた話の意味は分かる,言った話の言葉は正確。ぼくらの亀と蛙を使って満足したかい」と言ったので,居酒屋のおかみは恥ずかしくなって,顔がまるで血のように赤くなってしまいました。そして自分は亀を吐き,猿になった娘は蛙を吐き出して,二人に返しました。それから百姓の息子が赤い花を手にとって猿のからだにちょいと触れると,魔法が解けて元通りになりました。

ROB_02_06 p.48 

二人はまたその宝物を持って,再び村に戻り,幸福に暮らしました。

ROB_02_07 p.48 

デチューサンボはほっとして,

「いやあ,その二人は豪傑だなあ」と口を滑らせてしまいました。屍鬼グートゥプは,

「運の尽きた若造がまた口を滑らせた」と言って,再び墓場の清涼園に飛んでいってしまいました。

翻訳:chime
初版 2004/6/26
修正 2004/6/29

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